2021.11.28

【喫茶クニタチ】第10回/caffè espresso al banco

◆立ち飲みコーヒーを求めて

最近よく足を運ぶ国立に「立ち飲みができるカフェ」が出来たという情報を見つけた。 カフェでは本を片手にゆっくりと過ごすことが多い私は、「立ち飲みスタイル」というのものに好奇心を駆られ、国立本店のメンバーと共に早速お店を訪れてみることにした。
国立駅の南口から旭通りをズンズンと進むと、白い壁に大きなイタリア語の「è 」の文字。ここに違いない。少し緊張しながらガラスの扉をくぐると、お店を切り盛りしている 小沼新さん・誠子さん夫妻がカウンター横から出迎えてくれた。
店内を見渡していると「バンコとテーブル、どちらにしますか?」と新さん。 「バンコ」とはイタリアのバールにある立ち飲み用のカウンター席のことで、 私はもちろん興味があったバンコでの立ち飲みを選択した。

◆本物のイタリアンスタイル

さっそくいろんな話を伺おうとしたところ、新さんからバンコの説明が。当店のバンコとは、さっと飲みたい場合の専用カウンターなので、ゆっくりと話をするならテーブル席へ、と促されてしまった。
さて、バンコの魅力を理解できていなかったことに少し凹みつつ、気を取り直して注文するメニューを考えることにした。 店名にもあるようにメニューもエスプレッソが中心。また、日本の「カフェ」のようにコーヒーとスイーツだけではなく、ワインやおつまみも並ぶ。イタリアではバールに長居することはなく、その代わりに1日に何度も利用するため、朝から夜まで対応できるメニューがあるというわけだ。

看板メニューのエスプレッソと、せっかくテーブル席についたので、食べ物も注文した。私はティラミスを、連れ合いはポテトサラダを注文。 すると、新さんよりティラミスにはエスプレッソではないものの方が合うとのアドバイス が。かなり目から鱗だ。それを聞いて飲み物を紅茶に変更した。
やってきたティラミスは何とコーヒーの粉が一緒に付いてきて、「追いコーヒー」が出来るとのこと。スポンジに濃厚なエスプレッソがしっかり染みていて、とても深い味わいだった。確かに、これでさらに飲み物もエスプレッソだとティラミスの味が引き立たないのかも・・・。連れ合いは、ポテトサラダはバルサミコ酢が効いていてさっぱり食べられるので、しっかりとした味のエスプレッソと合う、と話していた。
ちなみに私の中ではエスプレッソというと「食後の口直しの飲み物」の印象が強かったのだが、イタリアではお砂糖をたっぷり入れてドルチェ的にも楽しむものなのだとか。 次回はバンコスタイルで味わってみたい。

◆国立の日常に溶け込むようなお店に

新さんは元々イタリア料理店で働いていた頃からエスプレッソに関心があり、当時からなんとか美味しい一杯を淹れられないかと自宅でも熱心に研究していたという。また過去に誠子さんと旅行でイタリアを訪れた際には、街の人々が毎日当たり前のようにバールでエスプレッソを飲んでいく文化にとても驚いたと話していた。

お店の特徴はもう一つ。開店がとても早く、平日はなんと朝7時から開いている。
これもバンコスタイルと関係していて、出勤前などに立ち寄って、エスプレッソを手短に飲んでいくといったお店の使い方をしてほしいという願いからなんだそう。実際に時々授業 前の学生や、仕事前のサラリーマンが来店することもある。
また、わざわざ遠方から電車で来るお店という姿は目指しておらず、あくまで近くに住む人たちに毎日楽しんでもらうスタイルを続けたい、と新さん。

それを聞いて、他市に住んでいる私は一瞬国立市民の皆さんに軽く嫉妬してしまった。朝早く美味しいエスプレッソを飲んで、学校や職場に向かい、昼間は友人たちとドルチェを頬張る。夜は会社帰りにおつまみ片手にワインを引っ掛ける。(お酒もあるのだ。)
あぁ、想像しただけで羨ましい。「気を負わずに、気軽に立ち寄ってくれると嬉しい」との夫妻の言葉通り、ご近所の人たちにとっては1日の中で様々な豊かな時間を過ごせる場所として、これから唯一無二の存在になっていくに違いない。

(ライター・写真:たきぐち)

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caffè espresso al banco
国立市東3-7-8
ホームページ:https://www.facebook.com/caffeespressoalbanco/
営業時間:平日:7:00-11:30/13:30-19:00、土日祝日:8:00-18:00
定休日:第1月曜、第2火曜、第3水曜、第4木曜、第5金曜、ほか臨時休日あり

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