2018.01.22

【喫茶クニタチ】第七回/PAPER WALL CAFE nonowa国立店

::: 味わうべきは

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味わうべきは例えばコーヒ一1杯だけだろうか。

カフェでの過ごし方は皆それぞれ、少なからず個人の流儀がある。それを鑑みて、豊かなカフェタイムを過ごすための演出が施されたカフェ。選択肢が多く、アイデア・着想も生まれやすい場所。広いスペース、絵本や写真集で彩られた大きな書棚ー。また、本、文具、雑貨の揃う店が隣接し、兎に角、視界に色々な情報が飛び込んで来る。

ここ、「ペーパーウォールカフェnonowa国立店」はそれら雑多な視覚情報をうまいこと束ね上げ、落ち着いた1つの作品のようにしてしまう力量のあるカフェである。今日も和やかに、店員さん達がお客達を出迎えている。

おそらく新参者のお客であれば、まず最初に目を奪われるのは、店内奥の書棚だろう。

常に洗練された本達が配置されている。これらは全てアウトレット本、もしくは古本ではない絶版本であったりもするそうだ。ー読書好きであれば手に取らぬわけにはいくまい。

やはり、系列書店とのタッグが強力だそうで、以前は大学講師のトークイベントを3ヶ月に1度の割合で開いていたそうだ。毎回講師がかわる、興味深いイベントだったようだが、今後行うかは未定とのこと。

是非とも、復活していただきたいものだ。さらなる味わい深さを、期待して待っていよう。

::: 時には冒険ということ

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カフェは3年目を迎えようとしている。

オーダーをあれこれ試すのは、何も若者や新しいもの好きに限ったことではない。

意外や、味の冒険する年配の方が多いそうだ。

彼ら人生の諸先輩方は、おそらく時に遊び心が重要であることを、熟知しているのだろう。

そうして自分の好みの一品を見つけ出し、味わい、また次の愉しみを見つける。ブレンドコーヒーばかり頼んでいては、「進めない何か」がある。「知らない」ことも1度試せば「知る」ことが出来る。ー時には冒険を。

実は裏メニューもあるそうだ。ソイミルクにカスタムしたり、カウンターで伝えればやってくれるという。

どうだろう。思い切って、ひとこと頼んでみてはいかがだろうか。心が弾むに違いない。

::: カフェは日常に食い込む

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「ここは日常の1ページ」と店長の木内さんは語る。

朝来て、夜の仕事帰りにも。日に複数回ここを訪れる人間は多い。

一見フリーランスの仕事をしているようなお客は常にいる。筆者も、よくここで作業に勤しむ。ラップトップの画面を凝視する我ら肩こりの民、長期滞在客へとスタッフさんたちの粋な計らいが。ードリンク2目より、100円引のレシートである。

これはカフェで働く店員さん同士のアイデアから生まれた割引制度のようだ。

長居客を嫌う喫茶店が大多数であるなか、真逆をゆく発想だ。煙たがれる長居さえも歓迎してしまう、懐の深さ。全く脱帽である。これは、もう、愛と呼ぶべきだろう

::: 中庸の美

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雑多な年齢層、そして目的を全く異にする人間の日常が、カフェでは交錯する。

或る時は1人客、或る時は時は家族連れ、或る時は学生がやって来る。勉強もあればたわいもないお喋りもある。いわば店内には混声大合唱がひっきりなしに鳴り渡るというわけが、この混声合唱はどこのカフェでも成り立つというわけではない。

例えば、都心のオシャレすぎるカフェでは実現できない。親子連れの声は響きにくいだろう。子供が飽きて騒いでは、と母親たちは内心気楽でない。ではローカル喫茶店の、あのレトロな場ではどうか。若い高校生の声が少々響かない。ー少し洒落ていつつも庶民的な、良い意味での中庸・丁度良さが、人々をペーパーウォールカフェに惹きつけてやまないのではないだろうか。

::: スロー・イット・ダウン

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日常にまんねりを感じたのなら、人恋しくなったのなら、それか疲れたのなら、1人でカフェに行こう。知らないカフェもいいが、とりあえずペーパーウォールカフェに行くといい。

ここは優しい。ーそして、出来れば長居をしてみよう。ゆったりと周囲を見廻し、観察しよう。自らの裡と照合しよう。コーヒー傍ら、のんびり本を読もう。何か、じっと見つめすぎて見えなくなっていた何かが、ここに来ればおのずと見えるようになるかもしれない。

(ライター:小菅のび/写真:安保美希)

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PAPER WALL CAFE nonowa国立店
国立市北1-14-1(JR国立駅nonowa国立EAST内)
電話:042-843-0361
営業時間:19時~21時(L.O.フード20:30)
定休日:なし

 

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