2022.07.18

【徒然本店】旅の途中で

国立本店メンバーによる連載エッセイ「徒然本店」、今回はちばがお届けします。

自分は何者か?

いつの頃か時代の流行には興味がなくなった。
まわりに流されず、自分の好きなものを好きなように楽しんでいる。

学生時代に文献研究をした影響か、芋づる式に古いものを追いかけている。
1冊読んだら同じ作家の作品、あるいは作中に出てきた作品、というふうに。
それは本だけでなく音楽も同じ。聴くものはどんどん古くなっている。

旅を続ける人々は いつか故郷に出会う日を (中島みゆき「時代」)

中島みゆきが歌うように、自分もそんな旅路から自身のルーツみたいなものを探しているのかもしれない。

自分の桃源郷、そして役割


そんな僕を生かせてくれるのが古書店、レコードショップ、古着屋さん。
いきつけのお店は数多くあるが、初めて足を運んだ街でもこれらを発見するとためらわずに入る。

お店に入った瞬間は宝探しをしているように時間を忘れて夢中になる。

商品は新品ではないので、ひとつひとつの価格が安く、大した出費にならない。
社会人になってそれなりの稼ぎを得るようになっても金銭感覚は子どもの頃と変わらない。いまだに100円の高い安いで買うのを躊躇する。悩んだ挙げ句見送ったあとに、「やっぱり欲しい」と思って日を改めてにお店に行くとなくなっていることもしばしば。それなのに学習しない。

これらのお店には目的の品を求めて行くこともあれば、何も考えずに行くこともある。
そんなときは思いがけない出会いの連続で「こんな作品が出ているのか!」と衝動買いしたり、名作だからいつか読む(聴く)だろう、と買うだけ買ったりで積読は増える一方。
間違いなく読み聴きするより買うペースが早い。
それは古着も然り。社会人になって私服を着る機会はめっきりと減ったはずなのに、クローゼットは学生の頃よりも間違いなく賑わっている。

こういった自分のいいと思うものを次の代に引き継いでいくことが僕の役割だと思っている。

そして国立、国立本店へ

そんな自分の嗜好を大概の人は「渋い」の一言で片付けてくれる。
でもそれでいい。だれが何と言おうと自分がよければいいのだ。

こんな旅の途中で僕は国立という街に住み、国立本店に出会った。

古着を身にまといレコードかけて、コーヒーを飲みながら本を読む……

そんな僕がときおり国立本店で店番をしています。
ひょっとしたらあなたと共感できるものがあるかもしれません。ひそかにそれを楽しみにしています。

text by Chiba
ちば ひろあき
古くさい人
レコード、古書、古着などなど時代に抗いながら芋づる式に古いものから自分のルーツみたいなものを探しています。 猫犬好き。鈍足なりに毎年フルマラソンに出ています。。
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