2021.06.24

【徒然本店】子ども食堂に惹かれて(前編)

国立本店メンバーによる連載エッセイ「徒然本店」、今回は蒲公英が取材ルポを前編と後編に分けてお届けします。

皆さんは、「子ども食堂」を知っているだろうか。
「名前は聞いたことある」「子どものためのご飯を作っている所じゃないの?」と何となく知ってはいるが、具体的な活動について分かる人は少ないのではないだろうか。
実際、子ども食堂はそんな一義的な場所ではなく、実に多様な面を持っている。

桜が咲き誇る春、国立市中地域の閑静な住宅街にある子ども食堂、その名も「たまご食堂」に取材させていただいた。
他孫、多孫。たまごという名前にはこれらの漢字が当てられる。
地域の大人たちが他の家の子どもと触れ合うことで、彼らを自分の孫のようにかわいいと思う。やがて交流の輪が広がり、地域の大勢の子どもが孫のような存在になる。そんな思いが込められている。

たまご食堂@中地域防災センター。晴れの日は折り紙や紙芝居を外で行い、雨の日は窓を開けた部屋で行う。

お父さんお母さんの心強い味方

たまご食堂では子供だけでなく、スタッフに地域の大人が20代から80代まで幅広く参加しているため多世代間での交流があるのが特徴だ。今はコロナウイルスのため、建物の中で食事は出来ないが、関係者が管理人をしている向かいのアパートの一室で希望者はご飯を食べることができる。
親子で来ていたあおいちゃんとお母さんに話を聞いてみた。
あおいちゃんは現在、特別支援学級に通っている。お母さん曰く「地域の年配の方と親しくなることで娘が登下校中に何か困っていたら声をかけてもらえる。他のママたちとつながれるので情報交換もできる」とのこと。たまご食堂は食だけでなく、地域の子どもたちの日々の生活までサポートしているのだ。
また、あおいちゃんにはお兄ちゃんがいるが、なかなか学校にいけないことが多い。それでも、たまご食堂に友達を呼んで一緒に過ごすこともあるという。食堂の枠にとらわれない、たまご食堂の懐の深さを感じた。

向かいのアパートで食事しているあおいちゃんとお母さん。

 

雨の日は防災センターの中の広い部屋で、折り紙やけん玉などで遊ぶこともできる。
小学1年生のりおちゃんと来年幼稚園生のつむぎちゃんは「工作ができて楽しい」と笑顔。
保護者のKさんは「子供が赤ちゃんの時に出会った親御さんと再会できるし、子供が勝手に遊んでくれるから助かる」とのこと。普段からよく利用しているようだ。

自作の色紙を見せてくれるりおちゃん

小学5年生のIくんはもともと利用者としてたまご食堂に通っていたが、顔なじみだった代表の木島さんに「お手伝いをしてみない?」と声をかけられスタッフを始めた。
「人がたくさん来る12時ごろはやることが多くて大変」と言いながらも検温を任された彼はどこか張り切っていて得意そう。「自分より下の子に工作を教えてあげるのは楽しい」と嬉しそうに話してくれた。
大学に入学したもののコロナのためにほとんど通学できないという女子大学生のYさんは「子どもに癒されている」と語る。他に社会人2年目のスタッフもおり、「(食堂は)月に2回程度の頻度でそこまで大変ではなく、第3の場として大切にしている」と答えた。

野外で自由に過ごす子供たち

いったい、たまご食堂はどうやってできて、どんな人たちが支えてきたのだろうか。後半では、たまご食堂代表の方とその事業を支える社会福祉協議会の方に食堂を作った経緯や当時のお話を聞いてみました。

(記事に載っている方の年齢や肩書は取材当時のものです)

text by TANPOPO
蒲公英
都内の大学生。自称、市井のジャーナリスト。
お散歩とお酒のおつまみが大好き。
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