2022.01.10

1/28 ブックトークイベント 国立夜読 第44回

 

~本イベントはオフライン@国知本店+オンラインで開催します~
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【ブックガイド部とは】
ブックガイド部は「読書の文脈づくり」をテーマしています。
本は一冊、一冊独立して存在していますが、見えない所でつながっています。
それは人も同じ。
独立して存在するものが交わるときにあらたな文脈が生まれてくるはず。
過去の本と今の本
過去の人と今の人
過去のテーマと今のテーマを
ブックガイドという形でつなげていくことが
われわれの活動の目的です。
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今回は文化人類学者の山口昌男を取り上げます。
山口の仕事は前期から中期には『道化の民俗学』、『文化と両義性』などにまとめられたような、様々な知的なリソースから現実社会に新たな解釈を与えるような仕事があります。一方で後期は日本の近代化において、歴史には表舞台には現れない人物からの歴史を描くような仕事をしています。
今回取り上げるのは後期の代表作である『「敗者」の精神史』です。『「敗者」の精神史』で
扱っているのは主に商業文化であり、出版、美術、スポーツ、学問など基本的に制度から外れたところで作られた人的ネットワークから派生した文化について、膨大な文献から分析しています。本書は山口なりの歴史人類学の新たな展開であり、時代の転換点において”知的企業家”がどのように振る舞ったか、それが歴史的にどのような意味をもつのかを考察したということにポイントがあります。この点は山口の前半部の仕事と密接に関係している部分です。

「国立夜読」は読書会ではないので、山口昌男が敗者から引き出した創造力について話せるように本書のエッセンスの一部を紹介します。それを踏まえて、市井の人々が生み出していく文化の可能性について参加者と色々お話ししてみたいと思います。

山口昌男は1931年北海道生まれ、戦中の記憶を持ちながら、戦後の日本の思想的な状況に影響を与えた人物の一人です。他の知識人に比べると学問的な厳密さより知的刺激が前に出るような文章を多く残しています。その知的自由さゆえに、アカデミズムではやや浮いた存在として、今となっては取り上げることが少なくなったように感じます。山口は日本で「現代思想」という言葉が定着する起点いた人でもあります。当時にフランスから現代思想の起点にいたレヴィ=ストロースやローマン・ヤコブソンといった人たちと山口は直接対談を申し込んだりしおり、山口の書く文章は80年代以降の思想的な盛り上がりを準備したといえます。

『「敗者」の精神史』で取り上げられるのは主に明治初期以降、日本が一部の支配層によって近代化していく時に、中央とは全く関係ないところ、すなわち民間で独自の文化を作った人に光を当てています。山口昌男の意図は本書では明確に書かれていませんが、山口の思想の中心となっている「中心と周縁」というキーワードがベースになっていることは明らかです。

山口昌男は本書であえて「敗者」という言葉を使っています。これは敗者こそが重要であるということの強調であり、中心において横行する生真面目な権威主義に対する大きなアンチテーゼだったと言えるでしょう。何よりも本書を面白くしているのは、取り上げる人物が魅力的な点、そして、その魅力的な人間の周りで構築される人的ネットワークが見えないところで今に続く文化を作っていることを、本書では細かいエピソードをつなげながら描き出しています。ある意味、一般の人間関係から広がる文化を侮ってはいけないというメッセージであるとも言えるでしょう。

日本の近代化における文化の立ち上がりに興味がある方はぜひ参加してみてください。

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【概要】
日 時:1/28(金)19:30-21:30
場 所: オフライン@国立本店&オンライン(ZOOM)
(申込みがあった方に参加URLをお知らせします)
入場料:無料
内 容:本をめぐるお話
参加方法: ページ下の入力フォームから
or Facebookイベントページの参加ボタンを押す
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