2021.03.07

3/26 ブックトークイベント 国立夜読 第34回


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【ブックガイド部とは】
ブックガイド部は「読書の文脈づくり」をテーマしています。
本は一冊、一冊独立して存在していますが、見えない所でつながっています。
それは人も同じ。
独立して存在するものが交わるときにあらたな文脈が生まれてくるはず。
過去の本と今の本
過去の人と今の人
過去のテーマと今のテーマを
ブックガイドという形でつなげていくことが
われわれの活動の目的です。
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久しぶりにリアル国立本店で開催します。
今回は経済をテーマにしてお話しします。

取り上げるのメインで取り上げるのは栗本慎一郎『経済人類学』です。
栗本慎一郎は経済史を勉強するなかで経済人類学という学問に大きな影響を与えたカール・ポランニーの業績に着目し、カール・ポランニーの弟子であるジョージ・ドルトンに師事しました。『経済人類学』はポランニーだけではなく、マルセル・モースや、ブラニスラフ・マリノフスキーといった文化人類学が立ち上がったころの民俗誌的な知見において、経済とかかわるような習俗が紹介されており、その後もさまざまな考えが展開・継承がなされていることが示されています。ポランニーを経済観を見ていくと、文化人類学、民俗誌的な歴史学、交易や法、貨幣とは何かという様々なことをについて考えることになりますが。その点についても『経済人類学』はコンパクトに過去の知見がまとめられています。今回はカール・ポランニーの見解を中心に紹介していきます。

ポランニーの経済観は「経済は社会に埋め込まれている」と説明されることが多いように、ポランニーは、それぞれの特定の文脈の中で出来上がってきた社会において、経済が様々な習慣の関係の中で成立した独特のルールとして形成されたと考えます。ポランニーは当時の古典派経済学(現在の主流派経済学の源流の一つ)の市場に対する考え方が経済現状を単純化しすぎていると批判していました。自由な個人が参加して価格と数量とを自律的に決定するという価格決定メカニズムの今の経済学でも前提となっている説明を、「自己調整的市場」と呼んでその非現実性をはっきり指摘しています。現実の経済学はその後発展し、政策として役に立つ形で整理されてはいるため、個人的に経済人類学が現在の経済学を批判するために成立したものとみるべきではないと考えますが、人間の経済活動が、いわゆる経済学的な枠組みで説明できない部分があるということを理解するために経済人類学はたくさんの問いと答えを提供してくれていると思います。経済を見るときにはある条件を限定したり、個別の文脈を無視したりしてモデルを作っていくわけですが、ポランニーは経済学のモデルの外側の世界がどうなっているのかについて考えたといえるでしょう。
ポランニーの学問的な動機は、自由な市場という発想を無批判に受け入れることによって、人間の相互的な関係性が破壊されていくことへの懸念がありました。時間をかけて形成されてきた習俗には再分配、共同体の義務といったものが埋め込まれていたけれど、気づかないうちにそれを否定することになっていないかという疑問は、今の我々からすると、すでに遠い話になっているかもしれませんが、今でも新たな気づきを与えてくれると思います。

『経済人類学』の著者である栗本慎一郎は専門である経済史、経済人類学を超えて統一的な理論の構築を目指す一方、一般向けに書かれた『パンツをはいたサル』が思想書でありながらベストセラーになりました。また、積極的にマスコミに登場し、衆議院議員を2期務めるなどセンセーショナルな側面もありました。今回は栗本さんの話題性のある部分は紹介しませんが、経済をはじめとする人間活動を、不合理な部分を含めた全体で説明しようとする一貫した態度については80年代以降の思想的な時代性を含めて、少し話し合ってみたいと思っています。

当日は『経済人類学』の内容を軽く紹介し、ポランニーの著作をはじめ、経済人類学に関連する本を時間の限りいろいろ紹介してみる予定です。

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【概要】
日 時:3/26(金)19:30-21:30
場 所:国立本店
入場料:無料
内 容:本をめぐるお話
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