2021.04.11

4/23 ブックトークイベント 国立夜読 第35回


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【ブックガイド部とは】
ブックガイド部は「読書の文脈づくり」をテーマしています。
本は一冊、一冊独立して存在していますが、見えない所でつながっています。
それは人も同じ。
独立して存在するものが交わるときにあらたな文脈が生まれてくるはず。
過去の本と今の本
過去の人と今の人
過去のテーマと今のテーマを
ブックガイドという形でつなげていくことが
われわれの活動の目的です。
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今回は国立本店でのリアルイベント+オンラインイベント(ZOOM)両方で行います。

今回は取り上げるのは阿部謹也さんです。

阿部謹也さんはヨーロッパ中世史を専門とする歴史学者で、一橋大学出身、一橋大学学長を務めた一橋を代表する知識人であり、国立と縁の深い方といえるでしょう。

阿部謹也さん自伝で、中学時代にカトリックの修道院で生活を送ったことが西洋中世史を研究するきっかけになったと述べています。一橋大学で歴史学者、上原専禄のゼミに所属するなかで、現代を知ることと、歴史を研究することの関係について考えを深めていったことが自伝に綴られています。

初期の代表作である『ハーメルンの笛吹き男』は中世ヨーロッパにおいて都市が発達する一方で、農村の伝統的秩序が大きく変化していくことの分析が大きなテーマになっていました。いわゆる大きな歴史の流れを論じるのではなく、市井の人々の生活に目を向け、日常において、普通の人々が何によって動かされているのかを追うというスタイルが、学問のスタート地点から阿部さんにあった問いだったと言えるでしょう。
さらに阿部さんには中世を中心とした日本の世俗世界にも興味があったようで、以前のイベントで紹介した日本中世史家の網野善彦とは友人としても深い関係を持っていたようです。ヨーロッパの世俗世界の特徴と日本の世俗世界の特徴を通して見えてくる人間の総体のようなものを掴むというところが阿部さんの大きな目標だったのでしょう。
阿部さんには『「世間」とは何か』という本があるように、日本社会の特徴を「世間」に見出しました。
阿部謹也さんがヨーロッパ中世を研究するにあたって、「私たちの存在そのものの下層に、過去が入り込んでいる」ということを強く意識していたようです。西洋がキリスト教を都市として受容していく中で、個人という感覚を人々に歴史意識として根付かせたと考えました。一方、日本にも独自の歴史意識があり、それを「世間」という言葉に代表させました。それは人間関係が規範になってしまう日本独自の生活感覚であり、明治期に制度や暮らしを支えるインフラが近代化したのち、現代にも依然として残っています。日本においては表面的に西洋を制度として受け入れた面と、生活の中で人間関係に支配されるという二重構造を生きる形で過去の感覚が残ったことを「世間」に関する複数の著作で描いています。

また阿部さんは自伝において学長就任時のことに多くのページを割いています。阿部さんが学長に就任したのは1992年~1998年。丁度大学において教養を重視する姿勢が弱まり、実学志向、大学も民営化についての議論が出てきたころでした。そんな頃に実学から遠いものの、現代を見る上で必要な教養としての歴史学を研究してきた阿部さんが、学長として何を考えたのか、自伝書かれていることはとても貴重な記録だといえます。

今回は取り上げる本は絞らず、ヨーロッパ中世史の研究と「世間」に関する考察をメインにして、最後に「大学とは何か」というテーマでも少し議論ができればと思っています。

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【概要】
日 時:4/23(金)19:30-21:30
場 所:国立本+オンラインイベント(ZOOM)
(申込みがあった方に参加URLをお知らせします)
入場料:無料
内 容:本をめぐるお話
参加方法: ページ下の力フォームから
またはFACEBOOKの参加ボタン
(オンラインイベント参加の場合はその旨をお知らせください)
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