2016.08.19

【今月の10冊】8月:本を持って町に出よう

「国立本店」の運営メンバーたちが、月替わりのテーマに合わせて選んだ一冊をおすすめするこのコーナー。「書を捨てよ、町へ出よう」と言ったのは寺山修司ですが、一緒に町に出るのもまた楽しいのでは? というわけで8月のテーマは「本を持って町に出よう」! 夏らしくアクティブに、家以外の場所…旅先であったり、公園の木陰やお気に入りの喫茶店、移動する電車の中等、出先で読みたくなる本を揃えました。残り少ない夏となってしまいましたが(スミマセン!)、一緒に夏の行楽を楽しんでいただければ!(タイトル50音順)
 


 

「文字で描く旅先の風景には、いつもワタクシが入り込む。」

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「現代俳句歳時記」/角川春樹・編
旅に持っていく本は、荷物にならず嵩張らないから薄いのがいい。薄くてなかなか読み込めないならなお良い。という事で、現代俳句歳時記でございます。歳時記いろいろありますが、春夏秋冬新春とそれぞれに分かれているのが持ち運びやすくお勧めです。もっぱら角川文庫のを愛用しておりました。今はハルキ文庫っていうところで出していらっしゃるのね。そういえば、角川映画も40周年だとか…。月日は百代の過客にして行き交う年もまた旅人なり、なのね。
 
 

「最も狭い場所から宇宙を思う男の、2年間の植物日記」

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「自己流園芸ベランダ派」/いとうせいこう
NHK「植物男子ベランダー」で田口トモロヲさんが主演されていた番組の原作本です。春は桜、藤、沈丁花、夏はアヤメ、露草に朝顔。秋はタイム、月下美人にリンドウ。冬はサザンカ、シャクナゲ、ヒヤシンス。新聞のコラムに掲載していたものをまとめているので、車内でひと駅ひと植物との格闘が読み終わります。面白いのは紙面の都合上コラムをお休みしている期間、植物がいい動きをしていたのに伝えられない悔しを語っているところです。我が家も大豆のツルにベランダを支配されつつあり、ツルのある植物は他のものよりIQが高いのではないか? もはやペットに近い⁈という著者の持論を納得するこの頃です。
 
 

「夏の空気が詰まった一冊」

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「盆の国」/スケラッコ
お盆の間の町の中は、いつもとちょっとだけ違う雰囲気があるように感じます。祭礼期間という緊張感か、休みに合わせて人が移動するにぎやかさか、それともお盆に帰ってくるご先祖様たちの空気か。このマンガの主人公、秋はお盆の間だけご先祖様の姿が見える女の子。中学最後の夏休みなのに、些細なことで親友とは気まずい雰囲気に。「このままずっとお盆だったら良いのに」…ふと頭に浮かんだ妄想がなぜか現実になってしまいます。戸惑う秋の前に不思議な青年・夏夫が現れ、お盆を繰り返していることに誰も気付かない町の中で物語は大きく動いて行きます。今年のお盆は過ぎてしまいましたが、自分が暮らす町に漂うご先祖様たちを妄想しながら読むと、読了後の町の中の空気が変わって見えるような気がします。
 
 

「ワクワクする言葉を求めて、街に出よう!! 海外へ行こう!?」

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「翻訳できない 世界のことば」/エラ・フランシス・サンダース著 前田まゆみ訳
別の国の言葉で表現するには難しい、その国ならではのニュアンスを持つ言葉を集めた絵本です。マレー語(マレーシアなどで話される言語)の、バナナを食べる所要時間を表す言葉、のようなクスッと笑えるものがあったり、「語れないほど幸福な恋に落ちている」ことを表すほっこりする言葉があったり。どんな環境でその言葉が生まれたのか、どういった人たちがどういう状況でその言葉を使うのか…。街でたくさんの言葉を浴びながら、そんなことを考えるのは楽しいかもと思える一冊です。
 
 

「『ほら、あたしたちの町よ』自分の町に帰るときに思い出したい一文」

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「魔女の宅急便」/角野栄子
このタイトルを聞くと先に浮かぶのはジブリ映画の方かもしれませんが、その原作本は旅先…もっと言うとそこから住み暮す町へ帰るときに読む本としてオススメしたい一冊です。あらすじはみなさんご存知の通り親元を離れ、初めてのまちで人間関係・仕事・一人で生活することに奮闘する半人前魔女キキとその飼い猫ジジの話。映画は「落ち込む事もあるけれど、私この街が好きです。」という短くもとても美しい言葉によって締められますが、本のほうもまたよいので引用します。『やがて遠くに光る海が見え、四角や三角の積み木をかさねたようなコリコの町が、現れました。「ほら、あたしたちの町よ。」キキは指さしてさけびました。』キキのように、住むまち暮すまちに大きな愛を持って生活できたら、といつも思います。
 
 

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