2021.08.10

8/27 ブックトークイベント 国立夜読 第39回 オンライン

今回のテーマは柳田国男です。今回は前半と後半に分けて開催します。

柳田国男は日本の民俗学を創始者であり、『遠野物語』という著作の作者として知られています。民俗学という学問を西洋におけるfolkloreと考えると民間伝承をベースにした人々の暮らしの歴史の再構成という印象があります。folkloreというと国家としてまとまった文明国のなかにおいて、過去を再解釈する学問という性質はあるものの、日本は鎖国していた江戸期が終わった明治期から急激に社会が変化していきました。日本において民俗を考えるときに、その社会生活の変化のなかで考えるという意味は非常に大きかったと言えます。柳田国男はそのような時代感覚を強く感じながら、変化の時代に必要な学問を考えました。その点で柳田国男の仕事は外国のfolkloreとは異なっています。

柳田国男はやや複雑な背景を経て、民俗学者としての活動に至ります。学生時代の柳田国男は第一高等学校時代にはすでに『文學界』『國民之友』『帝國文学』などにも投稿した文学者で、明治期に自然主義文学が立ち上がってくるなかで田山花袋、国木田独歩らと交流、ロマン的な抒情詩を発表していました。その後当時の文学にあり方に疑問を覚え、大学では農政学を学ぶことを選択、そのまま農政官僚になりました。柳田の民俗学も複雑な面があり、一言で形容するのは難しいですが、”日本とはなにか”ということを西洋的な論理とは別の所で考えようしたこと、資料と現地で触れたものや人、仲間のネットワークから柳田独特の方法でもって構成しようとしたことは非常にユニークなことだったと言えるでしょう。

取り上げるのは『明治大正世相篇』です。
柳田国男の著作のなかでは内容的にもまとまりがあり、ページ数も多い文章です。柳田は1919年に官僚を辞めたあと、朝日新聞に所属して日本各地を調査旅行したり、スイス・ジュネーブで国際連盟委任統治委員として活動したりと紆余曲折がありましたが、関東大震災を一つのきっかけにして、日本民俗学の立ち上げに向かっていきます。本書はそのころ、朝日新聞社が1930年から刊行された叢書、『明治大正史』の一部として書かれたものです。当時はまだ、明治大正に一般の人々の生活がどのように変化したかは専門領域では論じられていなかったところ、ジャーナリズムの方面から、まとめていくことを意図して作られたのが、『明治大正史』です。

柳田国男の著作および柳田ついて書かれた多くの著作を読んでいると、柳田は日本における「公共性の成立」に興味を持ち続け、上からの統治ではない住民の自治の可能性を考えたことがわかってきます。明治大正期の変化は現代の我々にとって、遠い話ではありますが、都市と農村、労働のあり方、家制度の変化など、現代とは異なるもの地続きのテーマとして考え見ることで見えてくるもがあるかと思います。

前編は柳田の略歴と『明治大正世相篇』の前半部、後半は『明治大正世相篇』の後半部を紹介し、明治大正、そして現在を生きる私たちにとっての「世相」と「公共性」について色々話し合ってみたいと思います。

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【概要】
日 時:8/27(金)19:30-21:30
場 所:オンラインイベント(ZOOM)
(申込みがあった方に参加URLをお知らせします)
入場料:無料
内 容:本をめぐるお話
参加方法: ページ下の力フォームから
またはFacebookのイベントページで参加ボタンを押す
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