2015.03.14

【「ほんの団地」の物件紹介66 妄想団地503号室】

「妄想団地」には、妄想から生まれた「妄想住人」がいる…

◆西川幸子 17歳 女性 高校生
503_room

17歳、女、ギャル
一人称は「サチ」
(幼少時は「さっちゃん」)

304号室の西川家の長女、浪人生の兄を持つ。高校に入学するまでは兄を慕い両親に愛され、団地のみんなにも「さちちゃん、さちちゃん」とかわいがられながら生活してきた。物心ついたときから週末の夕暮れや夜の団地の階段の踊り場で空を見ながらタバコを吸っている西島さん(牛島さん?)に密かに憧れてきた。会話をすればからかわれ、かと思えば高校受験を控えて心がささくれだってるのを見透かされたり、これが大人の余裕か!と圧倒的年の差を埋めるのにはどうしたらいいか、少しでも同等に見てもらいたいなぁ、なんで私は同じ年に生まれられなかったのかなぁとたまに夜に延々と考えたりする日々。

そんなあるときの日曜日偶然鉢合わせた西島さんと知らない女の人、その知らない女の人は西島さんに恋人だと紹介され、自分でも想定外にショックを受ける。その春に入学した高校でできたギャルの友達に触発され、今まで真っ黒だった髪を脱色し、ピカピカの革カバンを潰して、つけまつげなどのあらゆる装飾物で武装しギャルデビュー。見た目を変えるだけで見える世界って変わるんだ。と渋谷で新境地の洋服を買うのも、帰りに目新しい甘いものを食べながら友達とダラダラ喋るのも心底楽しんでいた。

そんな自分を変わってしまったと顔を合わせるたびじっとりした目で見る兄がうっとうしくなり、今までかわいがってくれていた団地のみんなも「どうしちゃったの?」というのがお決まりで、誰ひとりとして「かわいくなったね」と褒めてくれないのが不満だった。大好きだったはずの国立に少し居づらくなった心地がしてきている。

唯一ギャルデビューしてからも、それまでとまったく対応を変えない西島さんになんとか言って欲しくて、あと家族がヤイヤイうるさく感じてきて空き家だった五階を借りて、現在は半一人暮らし中。
悩み多きJK。

>> 妄想住人・生みの親:里形/ 育ての親(選書):川村

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