2018.11.27

12/14 ブックトークイベント 国立夜読 第12回

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【ブックガイド部とは】
ブックガイド部は「読書の文脈づくり」をテーマしています。
本は一冊、一冊独立して存在していますが、見えない所でつながっています。
それは人も同じ。
独立して存在するものが交わるときにあらたな文脈が生まれてくるはず。

過去の本と今の本
過去の人と今の人
過去のテーマと今のテーマを
ブックガイドという形でつなげていくことが
われわれの活動の目的です。
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読書範囲の広い国立本店メンバーの二人が様々な本を紹介していきます。

少人数でやっているので参加者の質問も大歓迎です。

今回取り上げるのは山崎正和さん
山崎さんは1934年生まれの劇作家、評論家です。

劇作家でもある山崎さんですが、著作が非常に多く、そのほとんどは学問の領域を超えた文明論や芸術論を扱っています。
哲学や歴史学、社会学の本を引用しながら、学術書では扱わないようなところまで議論が及んでいくのが山崎さんの著作の特徴です。
山崎さんの最初期の仕事として1963年に発表した『世阿弥』という戯曲があります。岸田戯曲賞(現在の岸田國士戯曲賞)を受賞したことがその後の文筆活動の出発点になっています。であるがゆえにといえるかはわかりませんが、「劇」と「日本」という観点が奥のほうに流れているように思います。

そんな山崎さんですが、今回取り上げる本は社会分析的な要素の強い本です。『柔らかい個人主義』は1984年に書かれた本で、その時代の変化を鋭く分析した本でありながら、その分析は今での世の中で十分通じるところがあるという点において非常に特異な本です。

本書は60年代の工業化をベースにした経済発展が終わった後の70年代を、経済的・文化的な変化が急激かつ複雑だった時代と捉えています。70年代の急激の変化の中で進んだのは脱産業化=消費主義化であるというのが本書のスタンスです。これにともない60年代にある程度維持されていた「顔の見える関係」が急激に崩れていった70年代であったと振り返っています。それに続く80年台、また別の関係性が生まれてくるのではないか、そういう期待を山崎さんは「柔らかい個人主義」という言葉にこめました。

20世紀の個人主義が求める主体はあまりにも自己決定的でエリート的、理性的です。山崎さんがこれを「硬い自我の個人主義」とよび、そもそも無理があったと指摘します。 一方で、消費社会が高度していくとそのような「硬い自我」から遠い普通の人たちは「顔の見えない関係性」に苦しむ。そんな状況に対して、新しい「社交」が生まれることによって、初めて「顔の見える関係」を獲得することができる。『柔らかい個人主義の誕生』で示されたのはそんなストーリーです。

しかしその後、時代はそのように変化したとは思えません。80年台が終わり、90年、00年が過ぎても、新しい個人主義も、顔の見える関係も、その萌芽すらあった様には思いません。初期のインターネットはこれに近い希望を抱いていたようにも思えますが、これも結局、幻に終わったように思える。とはいえ、言い換えれば私たちはいつだって「柔らかい個人主義」に移れる可能性を内に秘めているということかもしれません。

内容的にはそんな感じになりますが一冊読んでいけば、他にもいろいろな論点が出てきて興味深い。

本の内容に触れつつ、参加者の方々と会話しながらゆっくり進めていこうと思っています。
【概要】
日 時:12/14(金)19:30-21:30
場 所:国立本店
入場料:無料
内 容:本をめぐるお話
参加方法:FACEBOOKイベントページの参加ボタンを押す。
またはこのページの下の入力フォームから

【今後の予定】
・中村雄二郎
・民藝
・加藤周一
・渡辺京二
・河合隼雄
・網野善彦
・書物論
・振り返り

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