2018.01.15

国立本店ブックガイド部 第2回選書

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今回のテーマは民藝。
1926年に柳宗悦を中心としてはじめられた民藝運動は、現在に至るまで活動が続けられています。
柳たちは、豪華な装飾を施した鑑賞用の作品ではなく、名もない職人が作った日曜人の中に、「用の美」が宿っていると語りました。民芸運動は美の価値観を問うことを通して、生活の豊かさを問う活動でもありました。良い生活と「モノ」の関係を考えた柳について知ることは、モノが溢れている我々の生活に別の視点を与えてくれるはずです。
民藝運動の中心は柳宗悦で、初期の民藝運動には柳個人の考え方が強く反映されています。今回は柳宗悦の考えたことを通して民藝とは何かの基本的なところを抑えます。

☆参考資料:  リファレンステキスト集(キーワード「民芸」)
pdfファイル  (ダウンロードリンク)

①『民藝四十年』柳宗悦

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本書は病床にいた柳宗悦が、自分の著作の中から論稿を選んで作られたものです。
40年の民藝の歴史を振り返りでもあり、民藝運動の中で柳がどのようなことを考えて来たのかがまとまってます。主要な文章をコンパクトにまとめた本とも言えます。
一連の論稿は、それぞれに独立した要素がありますが、共通して述べられているのは「美とはなにか」という問いです。その答えは、手仕事品の収集、職人の性質、朝鮮・琉球などの具体的な地域、仏教、日本と西洋の対比などを巡って語られます。見えない豊かさを言葉とものの収集という形で、見えるようにしたのが柳にとっての民藝運動でありました。

器に見られる美は無心の美である。美とはなにか、何が美を産むか。どうして無学な工人たちに、かかる思索があったであろう。それがどうして出来るか、それにいかなる性質があるか、問われるとも、何一つ答えの持ち合わせがなかっただろう。ただそこには堆積せられた遠い伝統と、繰返された長い経験との、沈黙せる事実のみが残る。だが彼らは識らずとも作った。否、識ることを得ずして作った。(柳宗悦,’工藝の美’,『民藝四十年』,岩波文庫,1984)

②『手仕事の日本』柳宗悦

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全編を通して、語りかけるようなやさしい言葉で書かれています。東北から沖縄まで、それぞれの地域の手仕事品が、民藝独特のシンプルな絵とともに紹介されています。地域の特徴を踏まえ、用途、どこかが美しいのかが読みやすく書かれていて、品物紹介としてもよく出来ています。

手仕事品をめぐった後、生活において美が深まること、についての文章が加えられています。生活に親しみや温かさを与えるために時間をかけて作られた器物の美しさ、これを柳は「用の美」と呼んでいます。この部分、今を生きるの中にもある種のあこがれを持つ人も多いのではないでしょうか。旅行記としても読めるし、日本各地の特徴を知れるという意味でもおすすめの本です。

実用に交わる品物のごときは位の低いものと評されてきました。(略)美は帰って生活から離れた世界にこそあるものだと信じられるに至りました。しかし生活の中に深く美を交えることこそ大切ではないでしょうか。更にまた生活に交ることによって、かえって日が深まる場合がないでしょうか。むしろかくなる時に、美しさが確実なものになりはしないでしょうか。果たして生活から離れた時に美が高まってくるでしょうか。日々の生活こそは凡てのものの中心なのであります。(柳宗悦,’実用と美’,『手仕事の日本』,岩波文庫,1985)

③『民藝の擁護』松井健

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民藝においては2000年に入ってからも多くの文章が出版されています。本書もそのひとつであり、2014年に出版されています。現代において民藝を知ることに意味があると感じる人が、一定数いるのだと感じます。著者の松井健は題名の通り、現代において民藝を擁護する立場をとっています。民藝運動は柳個人の審美眼に負うところが多い運動であったことを踏まえつつ、その普遍性がどこにあるか?という問いに答えていくという形をとって、現代における民藝の重要性を考えています。

この本のテーマの一つに芸術と民藝の対比があります。柳宗悦が見出した美は、西洋の美に対する日本の美という見方の上にあります。変化していく環境の中で、人々の生活の豊かさに関する感性が失われていくことを柳は危惧したのです。

柳宗悦の美の認識が、あくまでも美という抽象概念をめぐるものではなく、個別具体的な美しい「もの」についてのものであることは、西欧的な伝統の中での美学の考え方真っ向から対立するものといわなくてはならない。(略)抽象化は議論を論理の世界の形式論に導くが、個別の美しいものは眼や感覚の領域に密接している。個別具体的なもの、それはたとえば単に、「茶碗」というものではない。ある時代、ある地域で実際につくられ、何らかの形で人の手を通して伝えられ、現にそこにある、ひとつの茶碗である。

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