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12月お店番カレンダー

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2020.12.04 | お店番カレンダー , お知らせ

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#国立本店_本日の一冊 『思考の取引 #国立本店_本日の一冊

『思考の取引 書物と書店と』ジャン=リュック・ナンシー 著 西宮かおり訳 岩波書店

書物、あるいは読書について語るということは、どこか"考えること"の外側に立って考えている感じがする。"メタ"思考的といってもいいかもしれないが、その語りに耳をすませるとき、人間が何かを考えて生きざるを得ない存在であることを身に染みて感じる契機になるのかもしれない。それが物語であれ、軽い散文であれ、難解な哲学書であれ、書物の存在が人を惹きつけ、読書を通して、自身も書物を世に問おうと思う人が現れてくる。その持続こそが書店や図書館を含めた書物の生態系を作り出しているのである。
ジャン・リュック・ナンシーの『思考の取引』は本についての本だ。本について著者の見解を述べている、というのとは少し違う気がする。翻訳家の柴田元幸さんが帯に書いているようにこの本に含まれているのは"「情報」ではない"。この本を読んで、例えば私は冒頭に書いたようなことを考えた。これまた柴田さんが帯にかいてあることだが、そんな風に"読み手が自ら考えを展開していくことを求められている。さまざまな思考の素である"のだ。
なによりも素敵な言葉に満ちている。ただきれいな言葉が並んでいるではなく、絶妙にメタフォリカルで、読む人を考えることへと魅惑的に誘い込む。優れた文章家による技術の妙であろうし、翻訳家のちからもすごいものだ。本自体も美しく魅惑的。国立のMuseum Shop Tで購入したが、そのことも含めて、とてもよい読書体験だった。
例えばこんな感じ。
"ゆえに書物とは、伝達のための運搬手段や支持体として片付けられるようなものではない。(...) それは無媒介に、それ自体で、何よりもまず、みずからを相手におのれを伝達し、取引するものなのだ。真に書物を読む者は、この取引に加わるほかない"(p27)
"書物とは、なべてメビウスの帯なのだ。それ自体において有限にして無限で、いたるところ無限に有限でページごとにあらたな余白を開き、その余白がまたそれぞれに広がりを増し、あらたな意味や秘密をようしてゆく、そんなメビウスの帯なのだ"(p28)

読書とは我々を考える場所に誘い込む一つの装置である。一方で書物は、ずっと大切にしてきた宝物であったり、長らく対話を続けてきた古い友人だったりするかもしれない。なるほど書物とはそういうもの、やはり書物はただならないと、思わせてくれる一冊。

選者:中西

国立本店メンバーが日替わりで本のある暮らしをお届け
国立本店は、ちょっと寄り道したい時、1冊の本と向き合いたい時、国立のことをもっと知りたいと思う時。あなたのペースで過ごせる 新しい知に出会える空間です。国立が好きな人、本が好きな人、人が好きな人。いろいろな思いが集まる、街の「居場所」です。30名程度の本やまちが好きなメンバーで構成された「ほんとまち編集室」が運営しています。
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