イベントレポート:「蔵書票の魅力を学び、つくる」2016.10.30
10月30日(日)、国立市のくにたち中央図書館で「蔵書票の魅力を学び、つくる」会が催されました。
参加いただいた12名の皆さんは、それぞれ30代から70代と
とても幅広い年代の方々が「蔵書票」に興味を持っていらっしゃることがわかります。
くにたち中央図書館から企画の依頼を受けた
「国立本店」の加藤健介が、スライドに合わせて説明を行っていきました。
「蔵書票」って一体どんなものなのでしょう?
15世紀終盤、ドイツで活版印刷が発明され、本の大量生産が可能になった頃、
本の見返しなどにその所有者を表す「蔵書票」を貼るようになったのが始まりです。
日本に渡ったのは、一説では明治33年だと言われています。
当時ヨーロッパから木版画を学びに来日していたエミール・オルリックが、
文芸誌「明星」で蔵書票を紹介した記録が残っています。
蔵書票には、票主の名前やイニシャルのほか、
票主を表すモチーフ(紋章、本、天使、建物、植物、動物など)が記されていて、
その人の好みや個性が伝わってきます。
素材の紙、印刷の色や手法も多種多様。
コレクターに愛される日本の蔵書票を例に挙げると、手すきの和紙に印刷されたものや、
浮世絵の印刷にも使われていた「板目木版」によるものも。
名前やモチーフだけでなく、素材や印刷の仕上がりからも、本の持ち主の個性が現れているのですね。
皆さん熱心に講義に聞き入り、時折メモをとる人もいらっしゃいました。
20分ほどの講義を終えたら、デザイナーの江津匡士さんによる説明のもと、
「消しゴムはんこ」を掘ってオリジナルの蔵書票を作っていきます。
蔵書票に入れる情報は、下記3点。
- ・EX LIBRIS(「蔵書票」を示す言葉)
・名前(イニシャルでもOK)
・票主を示す絵柄
「消しゴムはんこ作りは初めて」という方も多かったので、絵柄とイニシャルの2点を掘り上げることを目標にしました。
あらかじめこちらで用意していた絵柄の中から自分を表すモチーフを選んで、
紙に写して、それをトレーシングペーパーで反転させて……。
皆さんもくもくと机に向かい、しんと静まりかえる瞬間も。
イラストレーターによるデモンストレーションも参考にしながら、
「この絵柄がいいかしら?」「ここはどうやって掘ったらいい?」と皆で相談しながら掘り進めていきます。
掘り終えたはんこを恐る恐る押して、出来上がった蔵書票に「うわぁ!」と歓声が沸き起こりました。
それぞれ手彫りのなんとも言えない味わいがあって、
インクの色や紙の素材を変えると印象がガラリと変わるのが不思議でした。
中には、プロ並みに凝ったオリジナルの絵柄を作られる方も。人それぞれの個性が出ていて面白いですね。
1枚は図書館での展示用に、もう1枚は持ち帰っていただきました。
一度はんこを掘ってしまえば、何枚でも自分だけの蔵書票を作ることができるのが嬉しいですね。
普段工作をしないという人も、
「図工の時間みたいで楽しかった」
「講義だけでなく、作ってみる体験もできてよかった」
と笑顔で話してくれました。
初めて作った蔵書票、私もさっそくお気に入りの本に貼ってみたいと思います!
ライター 加藤 優