2015.03.14

【「ほんの団地」の物件紹介40 妄想団地201号室】

「妄想団地」には、妄想から生まれた「妄想住人」がいる…

◆中村ちひろ 22歳 音大生(ピアノ教師)
201_room

私は某音大、声楽科の三年生。
この団地には生まれた頃から住んでる。大学へは原付きで通える距離で、両親とは父のサラリーマン最後の栄転に母も同行し別居。3つ下の弟の不規則な生活に、多少悩まされることはあるものの、いたって平穏な日々を送っている。
ただ、親からは大学の学費は送金するが、生活費は自分達で捻出せよとのお達し。弟は大学から帰ると近所のファミレスでバイト。私は週3日、防音リフォームをした自室でピアノを教えている。
最初は生徒が集まるか心配だったが、ご近所さん達の口こみのおかげで、レッスン日はどの時間帯もうまっている。
そお、生徒の3分の2は団地の住民だ。
先生の仕事はけっこう気に入っている。
けど、どうも扱いに困る生徒がふたり、いや3人いる。
自分のレッスン時間より早く来て、ちゃっかり居間で弟のゲームをやってる小1のカズ君。おうちではゲームをやらせてもらえないらしい。
それと、お習字教室を終えてそのまま来る小3のユイちゃん。墨だらけの手で、ピアノを毎回真っ黒にしてくれる。本人はピアノより習字の方が好きらしい。
そして午前レッスンの加代子さん。私達の食事事情を心配して、必ずおかず一品を差し入れてくれる。それはすばらしく感謝しているが…
後期高齢者よ〜負けるなぁ〜と自作の歌を毎回聞かされ、歌わされ、感想を求められる。
ムスメ時代の夢は歌手だったらしい。
そんな私の楽しみは、ひとカラ。アニソン、NHKみんなの歌、そして演歌。大学では決して歌うことのない曲を、正しい発声法で歌い上げた時の達成感が、ハンパない。

>> 妄想住人・生みの親:松岡 / 育ての親(選書):新関

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