2016.06.16

【今月の10冊】6月:雨の日に読みたい本

「国立本店」の運営メンバーたちが、月替わりのテーマに合わせて選んだ一冊をおすすめするこのコーナー。6月といえば、そう、梅雨。というわけで今月のテーマは「雨の日に読みたい本」です。じめじめ湿気がこもる中、蒸し暑かったり肌寒かったり、なんだか気持ちまでじんわり湿っぽくなりがちな雨の日。そんな湿っぽさをカラッと吹き飛ばしたり、しっとりとした雰囲気をさらに盛り上げたり、読んだ後は今より雨をちょっぴり好きにさせてくれるかも、なタイトルを取り揃えました。雨の日のおこもりのお供に、ぜひどうぞ。(タイトル50音順)
 


 

「ちょっとおこりんぼだけど人情たっぷりな、ばばばあちゃんの毎日。」

カーリルで開く
「あめふり」さとうわきこ
名作、ばばばあちゃんシリーズ。小さい頃、何度も読んでもらったなつかし絵本です。やまない雨にしびれをきらしたばばばあちゃんが、雲の上のかみなりさまに向けて、とうがらしの煙をもくもくさせると、かみなりさまのくしゃみがとまらなくなるお話。さいごはかみなりさまとも和解(笑)して青空復活。もうしばらく手にとってないのでストーリーもあいまいなのですが、ばばばあちゃんの、あっとおどろく痛快なお悩み解決へのあこがれは今も胸に。私もこんなおばあちゃんになりたいな。
 
 

「まちや建物は、思ったよりも雨と上手に寄り添っているようです。」

カーリルで開く
「雨の建築学」日本建築学会
雨水を「かりる」、雨水を「かえす」。建築や都市、まちの側面から、 雨量の多い日本においての、雨との上手な付き合い方が示されている本です。道に綺麗に装飾されたスリットは何であるのだろう。屋根の傾斜角はなぜ地域によって違うのだろう。あの家の樋はなんであんなに伸びているのだろう。まちを歩いていて気になる風景に遭遇した際にこの本を読んだら、その答えが雨にあるとわかるかも。小さなコラムにあった「雨にまつわる地名」によると、「雨窪」「雨返」「一雨」など、雨の付く地名は全国で300箇所ほどあるとか。この本を読めば、古くから暮らしのすぐそばにあった雨が、想像以上に日々の生活に浸透していることに気付かされるはずです。
 
 

「雨に朗々と、ひとりポエトリーナレーション」

カーリルで開く
「歌謡・演歌・ナツメロ ナレーション大全集」仲村ゆうじ
雨の日は気分転換に、ふだんしないことをしてみたくなります。たとえば部屋でひとり朗読なんてどうでしょうか? 文学的な詩や小説を読み上げるのもいいですが、たまには趣向を変えて、カラオケのナレーションに挑戦するのをおすすめします。昭和の歌番組につきものだったイントロの前口上は男と女、ときに都会と故郷、はたまた哀切と情念の詩情にあふれています。イントロの長さに合わせて読む早さを調節したり曲調によって声の抑揚を変えたりと、普通のポエトリーリーディングにはない臨場感を味わいながら日本の梅雨にひたってみるのも一興です。
 
 

「雨をテーマに、細やかな心理描写と情景描写が素敵なマンガです。」

カーリルで開く
「恋は雨上がりのように」眉月じゅん
『マンガ大賞2016』第7位(個人的にはもっと上位!)の作品です。ケガで短距離ランナーを諦めて欝々としていた女子高生と、うだつの上がらないファミレス店長45歳との恋。「橘さんは、いつも雨の日に突然現れるね。」との作中のセリフにあるように、雨をテーマに少しずつ進んで(ときには戻って)いきます。ちょっとした心理描写を何コマにもわたる情景でつづるシーンは詩的ですらあります。親子ほどの年の差が、若やいだり背伸びしたりしてそっと触れ合う瞬間は、誰しもが覚えのあるあの甘酸っぱさを感じさせてくれます。
 
 

「江戸の夜、川沿い、柳の木、番傘、必要不可欠な雨を想う」

カーリルで開く
「さらい屋五葉」オノ・ナツメ
江戸時代の雨って、なんであんなにたまらなくかっこいいのでしょうか。静かな夜の川沿い、柳の木の下の顔が見えない佇まいが美しい女、番傘を指す謎の浪人、などなど時代劇あるあるシーンで欠かせない役割を担う「雨」は、現代の雨とはまた違う日本人の血が騒ぐ風流さを持っています。「さらい屋五葉」は全五巻、生真面目な貧乏浪人の政が遊び人風の男 弥一に出会い、知らないうちに拐かし業に巻き込まれていく話。盗人に遊女あがりの美女、蕎麦屋の亭主とその娘、関わっていく仲間の話と、江戸のまちの暗い部分、作中に何度も出てくる雨のシーン。この季節に雨音を聞きながら読むとより一層、オノナツメの描く人間模様、江戸のまちの世界観を堪能できると思います。
 
 

「誰かの後をつけたくなってしまうかもしれません。」

カーリルで開く
「二重生活」小池真理子
じめじめ蒸し暑い毎日に嫌気がさしてカフェへ避難した、そんな時に読みたい一冊。何の目的もなく、「他者と自分を置き換え」て他人の人生を記録するためだけに人を尾行する。この本は、そんな「文学的・哲学的尾行」の実行を思いつき、近所の男性の後をつけてみたところから、他人の秘密を知ることに魅了されていく物語。なんとなくワクワクゾクゾクしてしまう行動ではないか。好きでも恨むでもなく、その人を疑似体験するためだけに。もしかしたら本を読む、ということに似ているのかもしれない。カフェで目に留まった他人を尾行してしまいたくなる気がする。
 
 

「描かれているのは私の日常、誰かの日常。」

カーリルで開く
「ひとり暮らしのOLを描きました」黒川依
雨の休日は何処へ行くにもなんかおっくう。ベッドの上でゴロゴロしたい。そんな時にこの本を開いてみると、描かれている日常にクスッとして自分の日常のあるあるネタでもありちょっと悲しくなるかも。でも雨の日にベッドでゴロゴロする一日もこの本のどこかに書かれてそう…。
 
 

「あめのひはパーティにでかけよう。」

カーリルで開く
「ぽっつんとととはあめのおと」作 戸田和代/絵 おかだちあき
あめの日は誰も遊びにこないし、行けないし、子供も大人も嫌になっちゃう…。雨が大きらいなあーちゃんがすねていると、窓際から『ぼくんちにいらっしゃい!』とさそわれてものがたりは始まります。雨の日だからこそ絵本を読んで子供心に戻ってみるのも、子どもに読み聞かせて親子の距離を縮めるのもいいかもしれません。
 
 

「マンゴーシャワーと呼ばれる、ベトナムの雨。」

カーリルで開く
「マンゴーの涙」小玉ユキ
表題作にもなっている「マンゴーの涙」は、サイゴン川沿いの大衆食堂で働く少女が、ある男性に恋をするところから始まります。やがてその恋がどうしようもなく報われないものだと知った少女は、激しいスコールが降りそそぐ中、ひとつ大人になります。その時の、この世のもの全てに激しく打ちつけるような雨の描写が印象的。ベトナムの雨季に降る激しいスコールのことを「マンゴーシャワー」と言うそうです。雨季が過ぎると、マンゴーが甘く美味しくなると言われているのだとか。日本の「梅雨」の文化にも通じるような気がしますね。
 
 

「掌から広がる、慈雨に生かされる豊かな時間」

カーリルで開く
「森の暮らし~たいまぐら便り~」安部智穂
今の時季に出回る梅やラッキョや山椒を使って保存食を作ることが、いつからか個人的に年間行事の様なものになっている。店先にこれらが並びだすと、やらねばならぬという気持ちになってくるから不思議だ。雨の音を聞きながら台所を蒸し暑くして、汗を拭きながら、こもるっていいもんだと独りごちる。そんな時に手に取る本です。レシピが書いてある料理本では無いのですが、掲載されている山の生活の写真はとても美しく、時々写っている食べ物の写真もさぞかし瑞々しくて美味しいんだろうなと思わせます。
 
 

Share on FacebookTweet about this on Twitter