2016.04.09

【今月の10冊】4月:お風呂に、ちゃ本(ぽん)

「国立本店」の運営メンバーたちが、月替わりのテーマに合わせて選んだ一冊をおすすめするこのコーナー、4月のテーマは「お風呂に、ちゃ本(ぽん)」(サムいダジャレですみません…)。今回のテーマは4/16(土)、17(日)に旭通りの鳩の湯で開催される「国立ポッポ祭り」にちなんだもので、お風呂に関する本やマンガを取り揃えました。今回ご紹介する本たちは、銭湯の広〜い湯船で足湯しながら本が読める「足湯図書館」にて閲覧可能です。気になる本があったら、ぜひポッポ祭りに足を運んでくださいね!(タイトル50音順)
◆ポッポ祭りの詳細はこちらをクリックしてください。 → 国立ポッポ祭り
 


 

「人は本当のことより心地いいウソのほうがすきなんだよ」

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「アンダーカレント」豊田徹也
銭湯の跡取り娘・かなえは大学の同級生と結婚し、家業を営む平穏な日々を送っていました。しかしある日突然、何の前触れもなく夫が失踪してしまいます。戸惑いや悲しみを抱えたまま、営業を続けるかなえ。その日常が、銭湯の風景と共に積み重ねられます。気遣いと噂の行き交う脱衣場、営業後のからっぽの浴槽、掃除のブラシに音高くこすられる床タイル。描写が淡々としているだけに、かえってその裏にある感情が色濃くにじみ出てきます。タイトルは「下層の水流、底流、暗流」という意味。いつもは表に出ることのない感情や、深く落ちてみないと気付けない何か、底から見上げた先にある希望ーー。そんなことを感じさせてくれる、しみじみと深い銭湯マンガです。
 

「あわとおもちゃいっぱいのガラゴのお風呂は世界一!」

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「うちにかえったガラゴ」島田ゆか
旅するかばん屋のガラゴは寒いのが大の苦手。寒くなる前にさっさと店じまいをして、帰り支度を始めます。家に帰り着くと一番にするのは、大好きなお風呂の準備。蛇口をひねって泡の石鹸を入れていると、トントンと玄関を叩く音。仲間たちがおみやげを持って会いに来たのです。ガラゴはみんなをお風呂に誘います。たくさんのあわあわとおもちゃでみんないい気分。いつの間にか眠ってしまったガラゴを仲間たちが洗ってあげます。伸びた毛を整えてもらっていると、なにやら美味しそうな匂い。仲間たちがご馳走を用意してくれていたのです。するとまたトントンと玄関を叩く音。誰が訪ねてきたのでしょうか。賑やかな宴のはじまりです。
 

可視化されるでこぼこと、そっと受け容れられる心地好さ

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「海のふた」吉本ばなな
先日、銭湯で働いている女性にこの小説をすすめられました。地元の西伊豆に戻りかき氷屋を開業する主人公の女性と、過去に傷を負い伊豆へ静養に来た女の子の間のひと夏の交流が描かれています。冒頭に二人で温泉に入るシーンがあるのですが、そこで主人公は女の子の身体に広がる火傷の跡を見てハッとする場面は公衆浴場の素敵な一面をよく表しています。そこではどんなに親しい間柄でも知りえない傷や身体的特徴などがあからさまに可視化され、しかし同時にじろじろと他人を注視せず個人間の距離を保つ暗黙のマナーが存在し、人間のあらゆるでこぼこがそっと受け容れられる。そこに銭湯や温泉の心地好さがあると思います。ちなみにこの小説の舞台・西伊豆は、銭湯の富士山ペンキ絵の風景に最も多く描かれる場所でもあります!
 

彼氏は小学4年生!いま読んでも色あせない、等身大の青春。

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「オトナになる方法」山田南平
年の差カップルが登場するマンガといえば、90年代に「花とゆめ」で連載されていた『オトナになる方法』ではないでしょうか。おっちょこちょいな高校2年生の久美子と、そんな久美子を背伸びして守ろうとする小学4年生の真吾くんは、なんと立派にお付き合いしている。年の差7歳のかわいいカップルと、真吾くんの同級生たちの関係が描かれています。そしてこのマンガには、「池の湯」という銭湯がよく登場します。真吾くんの苗字は「池山」。そう、真吾くんは銭湯を営む家の息子なのです! その後の彼らを描いた短編『オトナのコドモたち』では、久美子と一緒に実家を継ぎ「池の湯」の主人となっている様子が見れるますよ。
 

絵本作家・西村繁男が描く、とあるおふろやさんのいちにち。

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「おふろやさん」西村繁男
「大きいお風呂だわーい」「よっ。ひさしぶり」「いい湯だなぁ~極楽ごくらく」。ページを開いていくと、いろんなセリフが脳内でたくさん浮かんできます。なぜかというと、この絵本、最初のページ以外は文字がないのです。絵の力でとことん楽しませてくれる1冊なんです。昭和であろう時代の、どこかのまちかどの銭湯の、とある一日。人生いろいろ十人十色に銭湯を楽しむ姿、いいもんですネ。湯船ではしゃいで「しずかにしろ~い!」(予想)と近所のおじいちゃんに怒られているズッコケ三人組もいますよ。ぜひ、見つけてみてください。は~、わたしもはやく熱い湯に肩までつかりたい。
 

手ぬぐいなくして銭湯入れぬ

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「かまわぬのデザイン」パイインターナショナル/編
手ぬぐいをさらりと使う人はとっても格好いいです。なぜなのか。「粋」だからです。手ぬぐいといったら専門店「かまわぬ」の手ぬぐい、キービジュアルとして使用している絵文字の図柄は江戸っ子の「粋」の代名詞です。よってかまわぬの手ぬぐいは粋の二乗、粋界の神様のようなもの。この本にはそんなかまわぬが過去に制作してきた手ぬぐいがこれでもかと紹介されております。四季を表現しているものや、とっても芸術的で額で飾りたくなるもの、日々の暮らしで使いたくなるもの、ポップな漫画のキャラクターの図柄もあり見ているだけで楽しい一冊。これを首から下げて銭湯に行ったら周りから注目を浴びちゃうかも?と妄想ばかりが膨らみます。
 

お風呂はとっておきの「儀式(セレモニー)」

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「CIPHER」成田美名子
主人公のアニスは勇気を出したい時に、イギリス製のバスキューブを入れたお風呂に入ります。そこには離婚した家族がまだ幸せだった頃の記憶が残っているからです。とっておきのバスタオルと石けんを用意して、「魔法の粉」と呼んでるベビーパウダーを仕上げにはたくことが彼女にとっての「儀式(セレモニー)」だそうです。子供の頃、いとこのお姉ちゃんに「まだ小学生には早いよ」と言われたこのマンガをこっそり読んで、お風呂のシーンを何度も読み返しました。だから今でもお風呂に入る時は「勇気を出すための、これは儀式」と心の中でつぶやいている自分がいます。何と闘っているわけでもないけど、アニスのような強くしなやかな人間になった気になるのです、一瞬だけ。
 

ページをめくれば脳内は銭湯

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「銭湯の時間」疋田智+銭湯博士 町田忍
外界から遮断された家の湯船に浸かる。あるのは心地よさと目の前の文字のみ、至福の時間。あとは足を伸ばせれば文句無し。ならば文字世界に一歩足を伸ばし、想像の中の広々銭湯を楽しもうじゃないか。「銭湯の時間」はテレビ局のディレクターである筆者が、奥さんと共に都内各所の銭湯を巡る短編エッセイ。都内の銭湯が約1,300軒あり、入浴料が400円だった時代の銭湯やまわりの街、湯を楽しむ人々を妙に有り有りと描いていて、容易に想像銭湯に浸かることができます。15年で銭湯の数が半数以下になるなんて、この頃の人は想像できたのかな。今では畳まれてしまった銭湯も収録されています。パンチパーマの少し太ったあんちゃんは…まだまだ現役かも。
 

誰かの背中、流してますか?

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「もりのおふろ」西村敏雄
「お背中流しましょうか?」ってよく言いますが、実際誰かに言ったことありますか? 私はありません。銭湯や温泉に普段行く機会が少ないせいもあるかと思いますが、言っている人を見たこともないです。でも銭湯が町の社交場だった時代には、親子とか近所の人どうしで背中を流し合ったりしていたのでしょうね。この本は、森に棲む色々な動物たちがただ仲良く背中を流し合っているだけのお話なのですが、例えば今、争いが起こっている地域に大きなお風呂が出来て、敵同士で背中を流し合いなさい、という指令が出たらきっと些細な揉め事は減るのではないかな、とか子どもの読書感想文のような思いがぼんやりと湧き上がる1冊です。

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